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星山博之のアニメシナリオ教室



本が選ぶ


 サンライズ・アニメの好きな人にはお勧め。
 様々に納得づくで頷ける物が多いと思う。


感想


 私はサンライズ・アニメが苦手だ。作り手の主張が前面に出すぎていてそれが辛く感じてしまう。
 本書を読んでいて、まさにそういったインパクトに襲われた。
 星山師は脚本は80%作り替えられることを想定している。言い換えると脚本は作品作りの20%ということだ。
 ところが、私の受けた印象は全く違う。完成したアニメ作品には本書を読むと分かる脚本家の実像がかなり強く反映されている。
 エリート、学歴といった世間的成功者に対する反骨心のようなもの、主張を繰り返し強く伝えてくる所(星山師は特にコミュニケーションの重要性を指摘している)、私が辛く感じる作風そのままだった。
 
 例えば機動戦士ガンダムという作品がある。私はこれが大変苦手だ。何かに対する対抗心が強く感じられて辛い。それは宇宙戦艦ヤマトという作品の成功に対する意識だと後に分かった。分かってしまうとガンダムを見ている時、この作品が強く意識しているもう一つの作品が頭にチラついて、目の前の作品に集中できない。ガンダムならガンダムの世界に集中させて欲しいのだが、作り手が他の作品のステータスに目を向けてしまってることを強く感じさせられてしまい、落ち着いて見れない。(この辺りのスタッフの想いは図書館辺りで当時のアニメ雑誌を掘り返して見ると綴られている)
 しかもメッセージを明確に伝えるという行為として、技術が完成しているから余計によく伝わる。
 これが良いのか悪いのか分からないが、ガンダムは商業的に大変な成功を収めている作品で、その技術的な裏付けが、明確で、時に辛いと感じる程繰り返し訴えかけられるメッセージの力なのである。
 あるいは技術というのはその人の持つ想いを強く投影してしまうので、作品作りにはその元になる想いを予め吟味して取捨選択しておく必要があるということだろう。
 
 話は逸れますが、学歴批判に同調する人が多いのも事実である。先日も高学歴に対する意見反発がネット上に飛び交っていたらしい。
 私は学歴批判というのは学歴コンプレックスの現れだと思っている。
 学歴のある人や、本当に学歴を気にしていない人は、何も言わない。気にしてないのだから。
 学歴が関係ないなら高学歴かどうかで人を見たり反発したりしない筈である。
 気にしているのは反発している本人である。相手が人間的に穏やかで好ましい人物であっても学歴を明確にした途端、攻撃対象にされるのだから始末が悪い。
 
 公務員や高学歴者や資産家を攻撃して果たして自分に何の得があるのだろうか? そういうことを民衆のガス抜きのために行っている国家もあるが、我々はそれを傍目に見てウンザリしている筈である。
 
 学歴批判をする人の功罪は大きい。懸命に努力して学業に打ち込んでいる自分の子供に対して、進学の夢や積み重ねた努力を、無残に否定する悪質な『愚痴』を気づかず口にしているからだ。犯罪を起こした子供の善悪以前に、親の一言が既に犯罪なのである。自分のひがみや弱い部分を無抵抗な子供にしわ寄せしてウサをはらしているから、抵抗できない子供はさらに他人に八つ当たりするのだ。それも抵抗できない弱い立場の下級生や部下、子供や女性、まさかと想像もしていない無防備な人たちに……
 
 不満があるなら、試験勉強をして公務員試験に受かるなり、いい大学に入るなり、努力して商いで苦労を積み重ね、資産家になればいいと思うのだが……
 その上で自らの立場を放棄して、学歴なんか意味ない、と言えば格好いいと思う。学歴を批判する人は東大法学部にトップ合格し、入学式で退学届けを出してみたらどうだろう? おそらく他人の批判をするより明確に貴方のメッセージは伝わる。
 
 もしくは、もう一つの方法がある。それは直接他人(子供も含め)を標的とした暴力的なメッセージにするのではなく、作品などの表現に昇華することだ。
 その方が何倍も魅力があり、素晴らしく、多くの人に訴えかけることができることを知るべきだ。この本を読むということはそういうことなのである。
 
 話を戻しますが、強いメッセージはいろいろな反応を引き込むのである。それは社会現象になったり、注目を浴びたりする。そういった反応が商業的成功を呼び込んだのは確かで、そのメッセージを投げかけた人物の一人は、20%と存在感をなきが如く謙遜していらっしゃる星山師ご自身であることに違いない。
 もっともその20%で自分の作品だと分かるように書く、と綴られている。まさにその通りになっているのだからとんでもない方だと思う。アニメーション制作は(動きを見せるための)演出と絵だと思っている人に、この本は大変分かりやすく間違いを指摘してくれるだろう。
 ライターであればここまで書かれなくても感覚で分かっていることだと思う。しかしこの本は誰が読んでも適切な言葉で伝達し理解させられる本なのだ。
 
 星山師は自身を等身大の脇キャラになぞらえたり、高学歴エリートに対する反発を打ち明けていらっしゃるが、本書の内容を見るに大変に礼儀正しく緻密に業務を解説され、時に息苦しく感じられるくらいだ。
 特に共同作業の心構えを強調されている。つい暗黙の了解で済ませてしまいがちな部分を明確に伝えてこられている。繰り返し伝える、というアニメの表現そのままにきっちりきっちりと語られている。
 なかなか言葉にしにくいと感じる部分が多々ある。しかし、伝える努力を怠たるとコミュニケーション不足となり、結果作業のやり直しとなって費用を圧迫し感情的な摩擦も生じるだろう、と諭していらっしゃる。
 尊重すべき肝を伝えてくるにも関わらず、また、ある意味アニメ制作においてそれなりの地位にある方にも関わらず、脚本術における悟りのように提示してはいない。あくまでも熱く語られている。
 この本に書かれている理屈は納得のできるもので、誰もが分かりきったことと感じるプロセスもあるかもしれない。しかし、このやり方を貫いて明言し、さらに根拠を伴った結果にまで繋げるということは普通の人にはやはり無理だ。なにしろ一つ一つ印象に残るシーン、全てにプロセスと根拠があるのだから、そこに抵抗を感じない人にとっては最高に実践的な書であることに違いない。


構成について


 星山師ご自身が出版の完結に立ち会えなかったという事情があり、
 星山師を讃え、一言言葉を添え、感謝の意を伝えたい関係者の想いは痛いほどよく伝わる。それでも、章後に付して頂いた方がありがたい。後半が著者以外の言葉で埋まってしまったとしても、カラー口絵など充実しているので構成上さほど気にせず読ませることはできたと思う。
 この本が後世に残ったことは、私たちにとって大変な幸運だったと思う。日本の代表的なアニメ脚本家の一筆として拝見できたことにはただ感謝の意を表したい。

 

[ この記事は 2008/8/16 以前に作成されました ]



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